日本に成果主義が導入されて久しいですが、成功していると言えるでしょうか。失敗ではないでしょうか。メリットよりもデメリットの方が多いと感じませんか。
成果主義を導入して、社員のモチベーションや、会社の業績が上がった企業は、どれくらいあるのでしょうか。反対に、下がっている企業はありませんか。
また、成果主義を導入した企業が増加した一方で、うつ病などの心の病になる人の増加、パワハラの蔓延などの社会問題が表出しています。
成果主義の5つの問題点を通し、廃止すべき理由を書いてみたいと思います。
成果主義の問題点(廃止すべき理由)
成果主義には、下記5つの問題点、廃止すべき理由があると考えます。
1.日本に合わない
まず、成果主義の問題点、廃止すべき理由として、『日本に合わない』というのがあります。
日本は、和を重んじる国民性です。
個人でできることは限られていますが、和の精神で協力すれば、お互いの得意なことを活かし、不得手なことをカバーし合い、個人では成し得ないこともできます。
また、一人では考えつかないことでも、様々な価値観を持つ人と知恵を出し合うことで、思いもしないことを思いつき、今までにないものを作り上げることができます。
和を重視することで、1+1=2でなく、それ以上の成果を出すことができるのです。
一方、成果主義は、個人の成果を評価し、それに見合った賃金、昇給、昇格を決定します。
個を競わせることは、利己主義を増長し、組織全体の調和や総合力を失わせます。
個人や組織にプラスの効果をもたらす結束である和ではなく、良からぬ結束が横暴し、和を乱して、個人や組織にマイナスを生むのです。
2.成果を適切に評価できない
成果主義の問題には、『成果を適切に評価できない』というのもあります。
学校教育は、同じ条件のもと、教育され、試験を行い、予め用意された正解の数により、評価を行います。
一方、会社組織には、様々な業務があり、各々が業務を遂行することで、会社の業績に繋がります。それを横並びさせて、学校教育のように、個人を評価すること自体に無理があります。
仕事内容によっては、すぐに成果が出ないものありますし、個人の成果自体が見えにくい業務もあります。新規業務では、成果も出にくい上、その良し悪しの正しく判断するのも困難です。
職種や職群、職位などにより、仕事内容が制限され、真の実力が発揮できないこともあります。
また、評価を行う上司に問題があることもあります。赴任したばかりで成果を正しく判断できなかったり、個人的な好き嫌いや、嫉妬心で評価する上司もいます。
絶対評価ではなく、相対評価で、良い評価がもらえる人数や比率に制限がある評価制度では、成果を出しても報われない人も出てきます。優秀な社員が多い職場では、余程のことがない限り、良い評価を得ることはできません。
また、それぞれが異なる仕事をする中では、一律の評価基準で評価するのは難しく、個々の仕事に合わせ、評価基準の設定をする必要が出てきます。
それを各個人やその上司で決めたのでは、厳しい基準を設定した者が不利になるという、不公平な状態も生みます。
3.成果以外に評価すべきことがある
成果主義には、『成果以外に評価すべきことがある』という問題点もあります。
仕事や会社組織は、様々な人が関わり合い、成果や業績に繋がります。それを最終的に目に見える成果を出した者や、担当業務の成果だけが評価される制度は手落ちです。
中には、いくら成果を上げたとしても、他人の足を引っ張たり、アイデアを横取りしたり、担当業務以外のことを疎かにする人もいます。
一方で、みんなが気持ち良く働けるように、自ら職場の掃除をしたり、備品の補給をしたりする人や、評価には関係ない突発業務に快く対応する人もいます。
また、例え、仕事はできなくても、職場の潤滑油的な存在で、職場の人間関係を良好に保ってくれる人もいます。
エースばかりを揃えても、仕事や会社は、うまく回りません。
様々な人がいるからこそ、組織に成り立ち、業績につながるのです。
4.人間関係を悪くする
成果主義は、『人間関係を悪くする』という問題点もあります。
「成果を出した者が報われ、それに見合った賃金や職位を手に入れられる」という考えのもとでは、成果を出せない人は、人間として劣っているかのように扱われます。
日本には、もともと年長者を敬う文化がありましたが、成果主義のもとでは、軽視され、平気で、年長者や先輩をバカにする人が増えてきました。
反対に、バカにされないよう、後輩や年下の人を押さえつけたり、足を引っ張る人もいます。
成果を評価する上司は、必要以上に権力を持ち、それがパワハラやイジメにも繋がっています。
成果主義は、職場の人間関係や雰囲気を悪くさせているのです。
そして、そういった状況の中で、うつ病をはじめとした心の病になる人が増加しています。
5.モチベーションが上がらない
『モチベーションが上がらない』という問題もあります。
やった者が報われることで、社員のモチベーションや会社の業績も上がることが、成果主義のメリットとされていました。しかし、果たして、実際に、そうなっているでしょうか。
やった者が報われる人事制度なっておらず、逆に、「モチベーションが上がらない」というデメリットになっている企業も多いのではないかと思います。
現状では、上司の言い成りになるイエスマンや、姑息な手段で評価を得ようとする要領がいい社員が評価され、真面目で優秀な人材が報われないことが多くなっているように思います。
それでは、優秀な人材をつぶしたり、逃すことになり、業績の低下に繋がります。
いかがでしょうか。以上が、成果主義の5つの問題点になります。
成果主義は、その人事制度自体に限度があり、また、個人の成果に焦点を当て過ぎたばかりに、会社・職場に、殺伐とした雰囲気を生んでいます。
これでは、もともと、日本にあった年功序列制度の方が、会社の目標・成果に向かって、社員が一丸となって取り組みやすいのではないでしょうか。
それでは、個人のモチベーションが上がらないというのであれば、年功序列制度に少し改良を加えるか、現状の成果主義の評価制度を見直す必要があります。
成果主義を続けるのであれば、少なくとも、評価する上司自体の人間性や能力を客観的に評価すべきでしょう。
また、評価自体も、上司だけでなく、その仕事に携わった様々な人の意見を取り入れる必要があるのかもしれません。